こんにちは。
2025年10月から、新しく「就労選択支援(しゅうろうせんたくしえん)」という制度がはじまります。
これは、障害のある方が「どんな働き方が自分に合っているか」をじっくり試せる『おためし期間』のような支援です。
働くことへの不安や、どの就労支援を選べばいいか悩んでいる方にとって、とても心強い制度になりそうです。
これまでの制度の流れ
まず、これまでの働くまでの流れを簡単に整理してみましょう。
【今までの基本的な流れ】
働きたい!
↓
ハローワークへ相談 or 障害福祉サービスの利用申請
↓
「就労移行支援」or「就労継続支援A型・B型」を選ぶ
↓
働く・訓練する
でも実際には、こんな声がよく聞かれていました。
- 「A型とB型、どう違うのかわからない…」
- 「急に働き始めるのは不安。続けられるか心配…」
- 「就労移行支援って、就職できないと意味がないのかな?」
- 「まずどこに相談したらいいの?」
こういった「選び方がわからない」「すぐ働くのは不安」という声に応えるのが、就労選択支援なのです。
就労選択支援ってどういう制度?
ポイントはこの3つ!
- どんな働き方が合うか「ためして」考えられる
- 最長6か月間、無理のないペースで利用できる
- その後、A型・B型・移行支援などにスムーズにつなげやすい
┌──────────────┐
│ 就労選択支援(おためし) │
└──────┬───────┘
↓合いそうな支援を選ぶ
┌────────┬─────────┬────────┐
│ 就労移行支援 │ 就労継続支援A型 │ 就労継続支援B型
└────────┴─────────┴────────┘
想定される利用例:Aさんのケース
Aさん(20代・発達障害)は高校卒業後、仕事に就いたものの、環境になじめずすぐに退職。働きたい気持ちはあるけれど、「どの支援が自分に合ってるか」がわからず不安でした。
市役所に相談したところ「就労選択支援が使えるかもしれません」と言われ、利用をスタート。
最初の2か月は軽作業の体験や、簡単なグループ活動を通じて「自分の得意・不得意」を知ることができました。
スタッフとの面談を重ねた結果、「B型事業所で少しずつ仕事に慣れてから、将来的にA型を目指す」というプランに納得して進めることになりました。
誰が支援してくれるの?
就労選択支援は、主に以下のような事業所で行われる予定です。
- 既存の就労系福祉サービスの事業所(移行支援・A型・B型など)
- 地域の相談支援事業所や福祉法人などが運営する新しい支援事業所
お住まいの地域によって異なるため、市町村の障害福祉窓口で確認しましょう。
どうやって利用するの?
基本的には、障害福祉サービスと同じように以下の手順で進めます。
① 市町村に相談・申請
② サービス等利用計画を作成
③ 就労選択支援の事業所を決定
④ 利用開始(原則6か月まで)
今度は事業者側の視点で見てみましょう。
就労選択支援を実施する事業所のメリット
利用者層が広がる
- 今まで就労系サービスを使うか迷っていた人や、福祉的就労に不安がある人も対象になります。
- 就労移行やA型・B型に入る前段階の利用者が増えることで、新たな相談や支援のきっかけにもなりえます。
自事業所へのスムーズな導入につながる
- 選択支援からそのまま自事業所のA型やB型に移行しやすくなるため、支援の継続性が高まる。
- 利用者との信頼関係を事前に築いておけるので、ミスマッチが減る。
就労支援の幅が広がり、地域連携の中心になれる
- ハローワーク・相談支援事業所・市町村などとの連携が自然に強まり、地域の相談窓口的役割を担える。
- 「最初の相談はここへ」という立ち位置を確保できる可能性がある。
就労選択支援を実施する事業所のデメリット・留意点
利用期間が6か月と短い
- 基本的には「最大6か月」で終わる制度のため、収入安定にはつながりにくい面も。
- 継続利用や定着支援ではないので、一定の入替えが前提になる。
人員配置や業務の幅が広がる
- 多様な背景・障害特性を持つ人を受け入れるため、柔軟な対応力が求められる。
- 面談やアセスメント、関係機関との連携調整など、職員の業務量が増える可能性も。
地域や自治体によって制度運用の差が出る可能性
- 国の制度としては共通でも、市町村ごとの運用ルールや評価方法がまだ定まっていない部分もある。
導入にあたって準備すべきこと
① 人員・体制の整備
- 就労支援経験がある職員の配置が望ましい。
- 面談・個別支援計画・就労先との調整などに慣れているスタッフがいると安心。
② 受け入れプログラムの設計
- 作業体験・職場体験・コミュニケーション訓練・生活支援などを「体験型」で提供できる準備が必要。
- ユーザーごとに目標や不安が異なるので、柔軟に対応できるプログラムが理想です。
③ 地域連携・関係機関との関係構築
- 市町村の障害福祉課や相談支援専門員、ハローワークなどと連携体制を整える。
- 「どんな方を受け入れるか」「終了後はどこに紹介するか」など、地域全体での流れづくりが大切です。
④ 記録・報告業務の体制
- アセスメント・支援記録・事後評価など、適切な文書管理と報告体制が求められることが予想されます。
※重要※2025年7月時点の情報
2025年7月時点では、就労選択支援の報酬単価や人員基準の詳細は国からすべて出そろってはいません。
まとめ
就労選択支援は、「まずはためしてみる」「自分に合う働き方を一緒に探す」ことができる、これまでにない支援です。
「いきなり就職はハードルが高い」
「どの支援を使えばいいか迷っている」
そんな方こそ、この制度をうまく活用して、自分らしい働き方に近づいていけるとよいですね。
今回も最後までお読み頂きましてありがとうございました。