健常・障害の枠を超えて|水泳で出会った青年が教えてくれた真面目さの強さ 

障害福祉

こんにちは。 
今回は僕が過去に出会ったある青年について書こうと思います。 

僕は障害福祉をメインに業務に取り組んでいる行政書士ですが、人生の中で親族や知人に障害を持った方はおりませんでした。

目に見えないだけで、何らかの障害を持っている方もいたかもしれませんが、実際に僕自身が遭遇したことはありませんでした。 

と、思っていました。 

ところが、よくよく考えると僕が趣味でやっていた水泳の中である青年と出会ったのですが、彼が障害を持った方だったのを思い出しました。今回はその時の思い出について書いてみます。 

青年との出会い

僕は高校1年生まで競泳をしていたこともあり水泳が得意です。
ところが、ある程度のレベルまでとんとん拍子に進んだもののスランプに陥ったり、学業が忙しくなったり、元々しんどい練習をするのが好きではなかったこともあって高校1年の夏で辞めてしまいました。 

最終的には県大会では上位に入れる成績だったものの、全国大会には届かないという平凡な現役生活だったこともあり、大人になってから水泳への心残りが再燃してマスターズクラスで一生懸命泳ぐようになった時期がありました。 
当時はまだ30代前半だったので元気もありましたね。

水泳経験者という事もあり、昔取った杵柄を良い事にある程度勘を取り戻した僕は通っていたスポーツクラブのマスターズクラスでは若さも手伝って1~2番ぐらいの速さで泳げるまでに至りました。
よく言えばエース級の扱いでした(あくまで通っていた弱小クラブのマスターズクラスでの話です) 

そんな勘違いをしていた僕がある日出会ったのが別の施設に通っていた、とある青年でした。年齢は20代中盤ぐらいで比較的背の高い子でした。 

その子の事を知っている人もいて、「あ、〇〇くんだ」と親しげにしていました。 

ところが彼は何だかクール。あまり感情を現しません。 

取り敢えず一緒に泳ぐことになったのですが、当時は僕も30代とは言え、まだ若かったこともあり「負けないぞ」という気持ちもありましたが、一緒に泳ぐとびっくり!彼はとても速い!しかもキックが強烈に強くて、とても太刀打ちできませんでした。
最初は僕の方が先頭を泳いでいましたが、すぐに彼に追いつかれてしまうこともあり、先頭を譲ることにしました。 

それでも彼はクール…というより、どこか心配そうにしている。 

そこで周りの人から教えてもらったのですが、どうやら彼は精神障害を持っているとのこと。 

確かに会話に若干幼さを感じたり、噛み合わない点がありました。ところが泳ぐ実力は素晴らしく、JAPANの文字がある水着やキャップを付けていたので、障害者クラスでは日本を代表する大会に出ているようでした。どうりで凄いわけです。 

青年の水泳への真摯な取り組み

それから暫く、彼が僕の所属している施設に来るたびに一緒に泳ぎましたが、どうも先頭で泳ぐのが不安な様子でした。 

彼は練習メニューは言われたことを少し咀嚼して教えればできるものの、水泳の練習で使うペースクロックと呼ばれる赤と青の秒針と分針だけの時計を見て泳ぐことが出来ないことがわかりました。 

その他、「ゆっくりペースから徐々に速く」といった強弱をつけた練習も不得意のようで、基本的に彼はいつも全力でした。それが故にすさまじい体力と持久力を身につけていたのです。 

ペースクロックが読めない彼のために、僕ら他のメンバーは彼がスタートするタイミングで声をかけるなど、一緒に練習することで何というか一体感が生まれました

彼も声をかけてもらうことで安心してスタートして全力で泳げる、僕や他のメンバーも彼に追いつこうと必死に練習する。良い相乗効果があったと思います。

僕から見た彼の存在

当初は「他所から来た速そうな若者だけど負けないぞ」という対抗心を持っていましたが、彼の実力を見た僕は早々に白旗をあげて彼において行かれないよう必死に練習するようになりました。彼の存在があることで練習の質が上がったのは間違いありません。 

逆に言えば、他に彼がいることで何か特別なことがあったかと言えば特に何もなかったです。というより本当に彼の存在は「泳ぎの速いすごい選手だ」ということのみであり、障害があるなしは全く関係なかったし、僕らも全く気にすることもありませんでした。 

もしかしたら、この状態こそが障害福祉におけるノーマライゼーションが実現できていたのかもしれないと今になって思います。 

そう、当時の僕たちにとって「一生懸命練習して上達(早く泳げるようになりたい)という目標が同じでさえあれば、障害があろうがなかろうが全く関係ない」ことだったのです。 

まとめ

彼の存在は僕にとっても、同じコースで練習している人にとっても、いつしか大きな存在になりました。 

「あ、今日も〇〇くん来てる。じゃ、練習のスピードあがるなー。頑張らなきゃなー」って笑いながら話していたものです。 

また、彼は良い意味で手抜きが出来ない人でしたので、いつも全力。 

大人になったことで我儘になっていた僕ら(学生コーチに対して練習メニューがきついと、「しんどいー」とかぶーぶー文句を言ってた)と違い、言われたことを、ただただ全力で頑張る。この姿勢は素晴らしいものでした。 

彼らは一生懸命です。 

真面目です。 

そしてまっすぐです。 

障害福祉にかかわる者として彼の真摯な態度から大切なことを学ばせてもらいました。きっと今も頑張って泳いでるんだろうな。また会いたいものです。 

今回も最後までお読み頂きましてありがとうございました。

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